
プロローグ
今、誰もが簡単に情報を発信できる時代になりました。わたしは建築業界で撮影をさせていただいているので建築の話になりますが、SNSには毎日膨大な数の建築写真や空間にまつわる情報が流れ、スマホのスクロール一つで様々な建築・インテリア・ランドスケープなどの作品を見ることができます。
とても便利で刺激的な一方で、ふと感じることがあります。
「この情報、本当に信頼できるのかな?」
「何を基準に“良い建築”って言ってるんだろう?」
この疑問に対して、今あらためて注目したいのが、建築雑誌やインテリア雑誌など、編集者が関与しているメディアの存在です。
編集には「選ぶ目」があり、「文脈」があり、「責任」があります。
特に建築という分野は、感覚だけで評価するにはあまりに複雑で、背景や思想、技術的な意図が詰まったものです。だからこそ、情報を受け取る側がそれを正確に理解し、評価するためには、編集というフィルターの存在がとても大きな意味を持ちます。
新しい建築が次々と生まれる中で、その価値をただ“映え”だけで消費させないこと。 見せ方の美しさだけでなく、建築に込められた思想や文脈を伝えること。
それができるのが、編集者の存在であり、雑誌というフォーマットなのだと思います。
情報過多の時代だからこそ、「誰が、何のために、どのように編集したか」が、これからの建築メディアにおいてはますます重要になってくるはずです。
1. 情報の海に溺れる私たち
タイムラインには毎日無数の建築やインテリア、プロダクト情報が流れてくる。でも、その情報の「選ばれ方」には基準がない。写真の美しさ、言葉の巧みさに惑わされる一方で、どれが本当に価値ある情報なのか、判断が難しくなってきている。
2. 編集という“フィルター”の役割
建築雑誌やインテリア誌の編集者たちは、専門的な目線と責任をもって情報を選び、構成しています。そこには「流行っているから」ではなく、「未来に残すべきかどうか」という視点がある。それが、SNSにはない“信用”を生み出しています。
3. ビジネスと信用の境界線
ただやはり、もう広告に辟易している事実はあります。近年では、広告やプロモーションの色が濃すぎる情報が溢れ、読者の信頼を損なうケースも少なくありません。どの媒体でも広告・宣伝の部分は存在し、特に日本では、「売られすぎている」と感じさせると一気に距離を取られてしまう傾向があります。純粋に情報のみを受け取りたいわたしたちには、“売るため”ではなく“伝えるため”の媒体であって欲しいと感じています。編集というフィルターは、そうした商業的ノイズを整理し、伝えるべき価値を丁寧に届ける役割を果たしているのです。
4. 老舗や歴史あるメディアの重み
長年の実績を持つメディアには、読み手との信頼関係が育まれています。一度掲載されたということが、建築家やデザイナーにとって“名刺代わり”になる理由も、そこにある。「編集を通過した」という事実そのものが、一つの価値になっているのです。
5. 信用が価値になる時代に
本当に良い建築やデザインを見極め、伝えるために編集者が持つ審美眼と構成力はこれからますます重要になってくるでしょう。SNSでは届かない深度と信頼性、それを担保するのが「編集」というプロセスです。
まとめ
SNSが日常になった今だからこそ、編集という“信用のフィルター”を通った建築・デザインの情報に光をあてていくことが、メディアの役割だと思っています。「これは売り物です」ではなく、「これは文化です」と言える情報が求められる時代なのだと思います。
最後に私たちは、その「フィルター」に選ばれる立場である撮影者です。
その立場から思うことは、みなさんが受け取る情報はたくさんの精査が入っているものか、そうでないものなのかの判断をしていただけると情報の質が少し判断できるのではないかなと思います。