
プロローグ
建築写真を見ていると、ふとこんなことを感じる方もいるかもしれません。
「どのプロの写真も、ちょっと似てる気がする」
「水平垂直は正確で、光の入り方もきれい。でも、どこが違うの?」
それ、とても鋭い感覚です。
確かにプロが撮った建築写真は、一見似て見えることがあります。でも、その中にある**“微差”こそが本質を写しているポイント**なのです。
この記事では建築写真における“プロの違い”を、建築そのものの成り立ちと絡めながら考えてみたいと思います。
建築そのものが「秩序」でできている
まず前提として、建築とは理論と秩序によって構成された芸術です。
設計には機能と美しさのバランスがあり、素材や光、寸法、動線など、すべてが意図に基づいて設計されています。
つまり建築写真もまたその秩序を尊重しながら撮る必要があり、結果として「整った写真」になるのは、むしろ自然なことなんです。
では、その“整った中”で何が違いを生むのでしょうか?
プロの写真に宿る“見えにくい違い”
1. 設計意図を「読み解く力」
プロは建築をただ「撮る」のではなく、「読み解いてから撮る」ことを大切にしています。
設計者が意図した光の入り方、素材の見せ方、動線のあり方――それらを理解した上で、最も適した構図とタイミングを選びます。
つまり、構図が似ていても、“なぜそのアングルなのか”という背景の深さが違うのです。
2. 整っているけど、カチッとしすぎていない
水平垂直はビシッと整っているのに、なぜか硬く感じない。
それがプロの“抜け感”のある構図の妙です。
余白、奥行き、対角線の使い方…。見えないところで、視線誘導や空間の呼吸を意識しています。
3. 光を「待つ」ことができる
光と影を「演出」ではなく「理解と対話」で捉えます。
早朝、夕方、曇天、逆光――どの状況が最も建築の魅力を引き出すのかを見極め、時に「今日は撮らない」という判断もします。
これは経験と忍耐、そして目的意識がなければできないことだと思います。
雲のいいかたちを待ったりすることもよくあります。
4. 写真の“組み立て”まで考えている
1枚の写真だけでなく、複数枚で建築を伝える流れまで想定して撮影しているのも特徴です。
外観・内観・ディテール・人の動きなど、建築の世界観を物語として捉え、組写真として編集者やクライアントが使いやすいかたちにする力があります。
5. 空気を写している
これはとても抽象的ですが…
「なんかいい」と思わせる“空気感”を写しています。
それは建物のたたずまいや、時間帯の空気、人が使う気配までを映し込もうとする感性から生まれます。
似ているようでいて、同じではない
建築写真が似て見えるのは、建築という存在自体が秩序だったものだから。
その中での表現の違いは、ほんのわずか。でも、そのわずかな差が、伝わり方を大きく左右します。
プロの建築写真家は、「その建築をどう見せたいか」「誰に伝えたいか」を考え抜いた上で、“その1枚”に込めているのです。
まとめ
- 建築写真は「似ている」ように見えて、「伝える意図」が違う
- 設計意図を読み、構図や光を選び抜いている
- 単なる情報の記録ではなく、空間の“体感”を視覚化している
だからこそ、写真は美しいだけではなく、伝わるのだと思います。信じたい気持ちが強いですが!