プロローグ
建築は周辺環境に制約を受けます。周辺環境・風土・気候は建築を設計する上で道標になり、建築のひとつの方向性となるほど密接に関わっているため、建築写真においてもそれらを建築とともに表現するとより建築への深い理解へ繋がっていくと考えています。
この記事では建築と風景をどのように写真に融合させるか、そしてその調和を伝えるにはどうすればいいのかを考えてみようと思います。
1.建築と風景の調和とは?
建物はその場所や風景の一部として存在しています。 都市部では周囲の建築物が、郊外や自然環境では周囲の自然がその一部となります。 建築写真では建物のみ焦点にすると建築を純粋につたえることはできますが建築の背景を感じることが難しくなります。クライアントの要望や建ち方次第ですが、その意匠になった要因を探していくと調和が生まれた建築写真になるのではないでしょうか。
2.風景と建築の関係を理解する
建築はその環境に応じた設計意図を持っていることが多く、その意図を理解し写真に反映させることが必要です。自然素材を使った設計や、自然光を最大限に取り入れたデザインが多くあれば、それは人工物との対比やより自然を求めた設計だと感じられます。そうなると建築写真は建物と風景の間ある共通点や対比を強調しながら撮影することが求められます。
3.フレーミングを使った風景の取り込み
風景を建築写真に取り入れる際の技術の一つが「フレーミング」です。額縁効果ともいいます。建物の一部を前景に使い、後景に風景を配置することで、建築が風景と一体となった様子を強調する同様に、窓枠やアーチをフレームとして使い、その先に広がる景色を忘れることで、建物と自然が共存していることを表現できます。建物が自然に溶け込んでいる様子を強調するのも効果的です。
4.風景が建物に与える影響を撮影に反映する
四季があり、日照時間の違いがあります。風土によっても周辺環境は変化するため、風景の選定は建築写真に大きく影響します。例えば北陸の気候は曇天が多いです。建築もそれに対応した設計になっているため開口部が大きかったり、自然光を多く取り入れる設計になっていたりします。そうすると開口部から見える景色、外から見る建築に周辺環境をうまく取り入れるとより伝わる写真が撮れると思います。
5.都市建築と風景の関係
都市部における建築写真では周囲の他の建物との関係性や街並みが強く影響します。ほとんどが隣接した環境のためスケール感、街の動き、人の流れなどエネルギーに満ちた都市を表現することができます。
6.自然光と季節の変わり目を捉える
風景との調和を考える際に、自然光や季節の変化がどのように建築に影響を与えるかを考慮に入れます。春の新緑や夏の強い日差し、秋の紅葉、冬の雪景色など、季節ごとの自然の変化が建物の見え方を大きく変えるため、それを写真に反映させることで建物の魅力をさらに引き出すことができます。
まとめ
建築写真に関して建物と風景の調和を記録すると物語性が生まれます。その写真は、ある時ある瞬間その建築写真でなくてはならないこともでてきたりして、竣工時だけの写真ではなくなる場合もあります。環境との融合を意識し、建物がその場所でどのように存在しているのかを表現することが建築写真の一つの大きな課題でもあり魅力でもあります。なぜその建築がそこに成立しているのか、そこに建築の意味があり設計の意図が隠れているのではないでしょうか。