プロローグ
前回までの3つの記事で大まかに考えている構図について書いてきました。今回から改めて光について書いていこうと思います。
建築写真に関して自然光は建物の形状、質感、そして全体的な雰囲気を引き出す最も重要な要素の一つです。撮影の際は光の角度や色に注意を払っています。レンブラントのような光かルノワールのような光か、順光か逆光か。撮影条件によって様々な光になる状況でどんな選択をしているのか。撮影する日によっては晴天もあれば薄曇り、曇天、撮影時間の制約など状況の選択肢がない場合もあります。
この記事では自然光の角度や色が建築写真にどのように影響を与え、どのように効果的に活用できるかについて考えをまとめてみたいと思います。
1. 自然光について
自然光は1日の中で絶えず変化し、光の角度や色合いが刻々と変わります。 撮影する時間帯によって、建物が見える表情は大きく変わるため、時間を選ぶことが建築写真の成否を決める要素となります。
・早朝や夕方の強い光
まずは早朝や夕方の光です。曙光や斜陽、朝日や西日の強い光は、建築写真の基本ではこの時間帯に撮影はおこないません。建物に対して斜めに差し込むため長い影ができるため、強い立体感が生まれる代わりに角度によっては建物に光が反射したり影が建築を隠したりするので撮影には難しい条件です。特に都心部では建物が隣接している敷地が多いため撮影対象の建物に他の建物の反射光が当たったり、隣の建物の影になったりします。
・45度前後の直射
一般的な建築写真で最も撮影されるのはこの時間帯でしょう。通称レンブラント照明と言われる45度前後の光は、建築の立体感を最も効果的に見せてくれます。適切な明るさと適切な影のバランスがとれやすいので撮影には最適です。
・正午の直射
正午の光は太陽が真上にあるため建物に垂直に光が降ります。なお光が強すぎて建物がフラットに見えることもあるため、立体感を出したい場合は控えめに使用するのが良いでしょう。
・黎明や薄暮、太陽が見えない朝や夕方の光
通称マジックアワーやゴールデンアワーといわれるやわらかい光の時間帯です。空は美しくグラデーションになり建物周辺は暗く落ちてきているこのタイミングは照明設計を撮影する最高のタイミングです。
・曇りや雨の日の拡散光
曇りの日や雨の日は、太陽の光が雲によって拡散されるため、柔らかく均一な光になります。メリットは黒潰れのない写真が撮れます。デメリットはメリハリが少なくなるので撮影対象を選ぶことになります。雨のメリットデメリットは濡れている状況を活かせる建築家かどうがです。雨自体はかなり強い雨でない限り写真にはほとんど写りません。
2. 光の使い方、建物との関係性
光がどの角度で当たるかによって影ができる位置や建物のボリューム、マテリアルのディテールの表現ができます。建築を活かした方法などのを過去の経験を踏まえて考えてみます。
・斜めの強い光と長い影
斜めに当たる光は、建物の表面に長い影を作り、建物の彫刻的なディテールやテクスチャーを強調します。この効果をうまく活用することで、写真全体に記憶が生まれ、建物の存在感が際立ちます。
デメリットも強いこの光ですが個人的には好きな光で、感情的な建築写真が撮れると思います。建築写真の説明的な部分を少なくし、情緒的感情的な仕上がりになるので印象的な写真になりやすく、少し変わった建築写真が撮れます。訴えかけるなら劇的な部分を写真に入れる必要があると感じています。
・45度前後の光と影
最もポピュラーなこの光は建築写真の基本として使われています。注意点があるとすれば光の強さが面の角度によって違う場所を撮影することです。例えば四角い建物を斜めから撮影する場合、建物の面が2面見える状態だと思います。その時にメインとなる面とサブになる面の明るさが2:1程度が基本と言われています。
ここで例外があります。円柱の建物の外観を撮影することが初めてで、「正対・左右対称で」いつも通り45度前後の光で撮影すると自分が思っていた立体感が出ませんでした。円柱は当然曲線なので太陽に一番近いところが一番明るく、遠くなるにつれグラデーションで暗くなります。完全な順光で撮る必要がありました。改めて僕の真後ろからの直射になるタイミングで撮影すると思っていた立体感を出すことができました。
・正午の上からの光と真下に伸びる影
正午の強い視点では影が短くなるりつつ、硬い影が生じます。
夏至の時は80度ぐらいまで角度がつくので外観撮影では影が美しくなりずらいです。
内観撮影ではこの光を効果的に使う場面があります。例えば内部の天井構造や天井装飾などが特徴的な場合、正午の光が地面に反射して天井を照らしてくれます。
また影のコントラストを利用して、建物のエッジやラインを強調することができる可能性があります。
・黎明・薄暮から夜の光
黎明・薄暮の時間帯の写真は美しく、絵になります。
建築自体がひかりつつ、美しい空のグラデーションが照明設計を際立たせてくれます。
建築写真の基本的な構図で撮影すれば失敗はありません。あるとすれば撮影できる時間の少なさが問題になってきます。設計者との打ち合わせなどで撮るアングルを選定、撮影の下準備を終わらせておく必要があります。外観よりも内観の方が暗くなるのが早いので、内観をとった後に外観へと流れるとスムーズに撮影できます。
そして夜となり完全な人工光の世界になります。
設計者や照明デザイナーの設計が最も強調される時間帯では、照明していない部分を理解することが重要だと感じています。
3. 順光と逆光
・順光
順光は基本的に建築写真では使いません。先程述べた円柱形の建築や他の特殊な状況でないと僕はつかってきませんでした。理由は直射なのに立体感を感じずらい、テクスチャーが見えにくいなどがあります。順光をうまく利用するタイミングがあれば改めて記事にしたいと思います。
・逆光
逆光は様々な場面で使用できます。空間に奥行きを与える奥からの光、立体感の出る植栽やキラッとひかるテクスチャー、強調される影、印象的な写真ができあがります。
まとめ
自然光の角度は建築写真において、建物の魅力を最大限に引き出すための重要な要素です。時間帯や天気、光の方向を意識して撮影することで、建物の特性や雰囲気を表現することがございます光と影のコントラストを意識し、建物のデザインや素材に合わせたライティングを活用することで、建築写真の表現力をさらに高められるよう努めていきます。