プロローグ
建築写真はその構造美や機能性を伝えるだけでなく見る人の視線を建物の特定部分に導き、意図した印象を与えることが重要です。そのために活用するいくつかの技術が「フレーミング」と「リーディングライン」です。これらのテクニックを使うことで写真に秩序や動きが生まれ、建物の魅力がより強調されます。
この記事ではフレーミングとリーディングラインの使い方について、実際の建築写真にどう応用できるかを解説していきます。
フレーミングとは?
フレーミングとは、写真の中に自然な枠や囲みを作ることで、被写体を強調し、視覚的な焦点を作る技術です。建築写真では、建物のアーチや窓、ドア枠などをフレームに利用して、建物の一部をより際立たせることができます。
フレーミングの効果
フレーミングを使うと写真の中に明確な主題が生まれ、見る人の視線が自然にその部分へと導かれます。特に建物の特徴的なディテールやシンメトリーを強調したい場合に効果的です。
例えば長い廊下や連続するアーチの写真ではフレーミングを意識することで、奥行き感が増し見る人をその空間へと引き込む力強い構図が作れます。またフレームを通して見える建物の外観や内部空間を撮影することで、写真に物語性が生まれることもあります。
リーディングラインとは?
リーディングライン(導線)は写真の中にある直線や曲線が視線を誘導し、自然に被写体へと導く役割を果たします。建築写真では建物のラインや階段、道路、レンズによるパースペクティブを利用するなどがリーディングラインとして活用され、視覚的なガイドとして機能します。
リーディングラインの効果
リーディングラインを使うと視覚的なリズムが生まれ、建物の形状や構造がより強調されます。また視線が自然に導かれることで写真全体がまとまりを持ち、見る人が写真の中で「どこを見るべきか」を理解しやすくなります。
例えばまっすぐに伸びる道路や通路が建物に向かって導く構図では、写真にダイナミズムと緊張感が生まれ、建物の威厳や存在感を強調することができます。またカーブや階段などのリーディングラインを使って、建物内を探検しているかのような臨場感を写真に取り入れることも可能です。
フレーミングとリーディングラインを利用する理由
目指しているのは絵画の緻密な構図です。巨匠の絵画、有名な絵画は何時間も見る意味があり、発見があります。建築写真の撮影ではそのレベルの緻密さは難しい部分がありますが、第一印象の引き込みと奥深さを求めて目線の流れを楽しませることが大事だと感じています。主題があり副題がありそれらを伝える技術としてフレーミングやリーディングラインがあります。前回お話した三分割法、黄金分割も利用し写真全体を見てもらうよう努めています。
フレーミングとリーディングラインを組み合わせる
フレーミングとリーディングラインを組み合わせることで、より効果的に視線を誘導し、写真全体に強い印象を与えることができます。例えば、建物の入り口をアーチや窓のフレームで囲み、その先にリーディングラインとなる通路や階段を配置することで、見る人の視線を自然に奥へと導きます。
この組み合わせは建物の構造や空間を理解するためのガイドとなり、写真がよりインタラクティブな体験を提供します。
効果的なフレーミングとリーディングラインの例
- 都市の高層ビル
- 高層ビルの外観を撮影する際、手前にある建物や街路樹をフレームとして利用し遠くにそびえるビルに視線を導く構図を作ると、都市の広がりやビルの高さが際立ちます。
- 階段のリーディングライン
- 階段を斜めに撮影することで上昇感や方向性が強調され、視線が自然と上へ向かいます。階段自体が建物の内部構造を象徴する場合、この手法は特に効果的です。
- 長い廊下や回廊
- 廊下のアーチや柱をフレームとして使い、奥へと続くリーディングラインを作り出すことで、空間に奥行きとリズムが生まれます。
フレーミングとリーディングラインを使う際の注意点
- 主題が埋もれないようにする
- フレーミングを使うときは枠が主題を遮らないように気をつけています。主題が見づらくなるとフレーミングの効果が半減します。
- リーディングラインが自然に見えるようにする
- リーディングラインは視覚的に自然な形で視線を誘導する必要があります。不自然な角度や位置では視覚的な不快感を生む可能性があるため、慎重にラインを選びます。
まとめ
フレーミングとリーディングラインは建築写真における視覚的なガイドとして非常に効果的な技術です。これらを上手に活用することで、写真に奥行きやリズムを持たせ、見る人を自然と建物の魅力へと引き込むことができます。フレーミングとリーディングラインを意識し、これからも魅力的な建築写真を追求していきたいと思います。