プロローグ
建築写真は、建物の美しさや機能を伝えるための重要な手段として、長い歴史を持っています。時代とともに技術が進化し、表現の方法も多様化してきました。歴史を振り返り、その技術の進化と表現の変化を考えてみたいと思います。
初期の建築写真:記録としての役割
建築写真の歴史は、19世紀初頭にまで遡ります。 昨日の記事でも書いた通り、最初の建築写真はニエプスの窓から外の風景を撮影した写真と言われています。当時、写真は主に建築の記録として使用されていました。撮影は非常に時間がかかり、被写体となる建物は静的で動かないものが選ばれることが一般的でした。家や歴史家のための資料として使用されました。
建築写真の役割:瞬間の美を知る
写真は瞬間性時間を止める記録することが前提としてあり、個人的に重要視している特性はデジタルとモノとしての使用が可能です。
そして建築写真の特性として複数の写真で魅せることが基本となります。従来はアーカイブの役割が大きく、宣伝としての役割は少なくありました。また広告分野ではカタログ、雑誌などの印刷媒体での使用に適しており、デザインやディテールを考慮して伝えるための最適な手段として広く利用されています。現在、インターネット・SNSの普及により認知を取ることに使用されており、建築の背景を伝えていく流れも出てきています。建物の完成形とその前後の変遷を記録する重要な資料となります。
建築動画の役割:時間と空間を紡ぐ
動画は時間の流れ、深い情報、イメージを正確に伝えることができます。特性として、視聴方法がディスプレイやプロジェクターなどのデジタルデバイスになります。
建築動画は音やナレーションを続けることで、視覚情報に加えて聴覚的な要素も取り入れることができ、建物の雰囲気や感情的な反応をより強く伝えることができます。パブリック空間など、使用されるシーンや環境を伝えたい、企業イメージやブランディングを伝えることに有効です。現在は、写真よりも動画の方が認知・集客・ブランディングなどの構築に向いていえると言えると思います。
写真と動画の関係性:補足に合うメディア
建築において写真と動画の関係性は補完性だと考えています。
このためプロジェクトによっては写真と動画を撮ることで、建物の魅力を多角的に伝えることが可能になります。例えば、ウェブサイトやプレゼンテーションで使用する場合、動画で建物の全体的な体験を伝える、写真で記憶の美しさを補完するといった使い方が可能です。
実践の活用例
撮影では、竣工写真という分野においても宣伝を前提とした撮影が主になっています。
建築家や企業の認知を目的として、写真では従来通り建築を表現して動画で建築の雰囲気を伝えることが多くあります。また認知のために発信した情報が企業のイメージが伝わり、採用にも一役買っているとの意見もクライアントから伺います。
また、建築コンペティションや設計提案においても、動画と写真はそれぞれ提出する機会があります。審査する側も写真の自由度は当然理解している上、プレゼンテーションでは伝わりづらい実際の雰囲気を動画で知ることができるので、提出機会は増えてくると感じています。
まとめ
建築写真と建築動画はそれぞれ異なる特性と役割を持ちながら、建物の魅力を伝えるちからがあります。特に個人的におもしろいと思うのは、写真は実物にできるということです。現在ネット社会になり、その中で見てもらうことのハードルはどんどん上がり競争が激しくなってくる中、実物として空間に存在できる写真は、場をハックすることができます。ネット上では動画の価値が上がっていますが、現実では写真の価値が再評価されるのではないでしょうか。