プロローグ
建築写真は、単なる記録やドキュメンテーションを超え、アートとしての表現の場でもあります。建築物自体が美学と機能の融合を体現しているように、その写真もまた、技術と感性の結晶です。そんな写真をいつも撮りたいと考えています。この記事では、建築写真をアートとして捉え、美学と機能がどのように共存しているのかを探り、写真家としてどのようにその融合を表現していくかについて考えてみたいと思います。
美学と機能の融合
建築は、単に人が住む、働く、集うための空間を提供するだけではなく、その空間自体がデザインとして人々に感動を与えるものです。美しさと機能性が融合した建築は、それ自体が一つの芸術作品であり、その魅力を写真で捉えることは、写真家にとって非常に挑戦的かつやりがいのある作業です。
美学の視点では、建築物のライン、形状、色彩、質感などがどのように組み合わさっているかに注目します。たとえば、対称性やリズム感のあるデザイン、自然光が創り出す陰影、素材が持つ独特の質感など、建物の美的要素を強調することが、写真家の役割の一つです。
一方で、機能性の視点では、その建築物がどのように使用され、どのような目的を持って設計されたかを理解し、それを写真に反映させる必要があります。建築物が持つ機能を視覚的に表現することで、その建物が持つ本質を伝えることができます。
アートとしての建築写真のアプローチ
建築写真をアートとして捉える際には、いくつかのアプローチがあると思います。
まず、光と影の使い方です。光は建物の形状や素材を強調し、影はその対比として空間の深さや質感を引き出します。近年ではルノワールのような美しい明るさ、モネの日傘、日傘さす女性のような明るくコントラストの低い写真表現がよく用いられています。他にもレンブラントの夜襲。このように光が作り出す一瞬の光景を捉えることで、建物の美しさがより鮮明に浮かび上がります。また、夜景の建築写真では、人工照明を巧みに利用することで、建物の陰影や反射を強調し、幻想的な雰囲気を生み出すことができます。
次に、構図の選定です。建物全体を写すだけでなく、近・中・遠景をバランスを見て配置することで、意外な美しさやデザインの巧妙さを浮かび上がらせることができます。また、俯瞰や低いアングルからの視点を取り入れることで、普段とは異なる視覚的なインパクトを与えることができます。
さらに、色彩の調和です。色は写真の印象を大きく左右します。建物が持つ自然な色彩を強調することで、その美しさを最大限に引き出すことができます。また、モノクローム写真にすることで、色彩を排除し、形状や質感にフォーカスするアプローチも効果的です。
まとめ
建築写真をアートとして追求することは、写真家にとって、建物が持つ美学と機能をどのように融合させて表現するかという挑戦です。光と影、構図、色彩といった要素を駆使し、建物の美しさを引き出すと同時に、その本質や機能性をも視覚的に伝えることが求められます。
考え方として、日本画の構図は建築写真に向いていると思います。日本画はそこに存在していても無駄なものは書きません。歌川広重、奥村土牛など洗練された構図は写真に落とし込むことでより美しい写真となると思います。
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