
―建築写真に活きている考え方―
建築写真を撮り始めた頃、参考にしていたのは建築の本や写真集を読むことと、映画を見ることをよくやっていました。
むしろ、自分の中で“構図”や“物語性”という概念を育ててくれたのは、映画だったように思います。
映画の中には時間が流れ、登場人物が動き、光と影が移り変わります。建築写真は一見、静止した世界を切り取るものですが、実はそこにも“動き”や“流れ”があると思います。
それをどのように伝えるか――今思うとそのヒントを、映画からもらったといえます。
カット割と組み写真
映画を観ていて「このカットがあるからこそ、次のシーンが引き立つな」「あのシーンはこのシーンと繋がっているんだ」と感じたことはありませんか?
それと同じように、建築写真も一枚で完結するのではなく、複数の写真を組み合わせることで、空間の物語が立ち上がってくると感じています。
主役となる“メインカット”があり、その魅力を補完する“サブカット”があり、流れをつなぐ“間の写真”がある。これらを意識して撮影や編集をすることで、ひとつの建築がより深く伝わるのです。
僕はこのことを「花束をつくるように」とよく言っちゃってます。主役がいて脇役がいて引き立て役がいて土台がある。全部がメインだと緊張しすぎてしまうし、土台や脇役ばかりだど魅力的に感じません。
ワンシーン・ワンカットに命を込める
映画の名シーンは、実は非常に計算された構図や光の設計の上に成り立っています。
それは建築写真にも通じるものがあります。建物の一部を切り取るとき、僕はそこに「映画のワンシーンのような意味を持たせられるか?」を考えています。
光の入り方、床からの高さ、空間の重なり――それらがひとつの“語り”となるように、静かながらも力強い構図を目指します。
視線誘導と“余白”の力
映画では、観客の視線をどこに向けるかが非常に重要です。カメラの動きや人物の配置、背景の奥行きなど、すべてが意図を持って設計されています。
完璧な演出として思い浮かぶのはLEONという映画で、冒頭に殺し屋役のジャン・レノが影からスッと出てきて、暗殺対象の背後を取るシーンです。明るさのコントラストを活かした演出に加え、影の中に誰かがいそうな匂いを感じる完璧なアングルです。
建築写真も同様に、「どこに目を向けてほしいか」を意識することで、写真の力がぐっと高まります。
そして、“余白”をどう使うかもまた映画から学んだことのひとつ。余白には呼吸があります。情報を詰め込みすぎないことで、見る人に空間の空気まで感じてもらえる気がしています。
まとめ : アングルや構図以外でも役に立つ映画
学生の当時は映画が好きなこととで、写真の勉強できるかな?となんとなく観ていました。
アングルやかっこいいライティングを探していたのですが、仕事をするときに役立つのは映画が共通言語になることです。
あの感じ!を言語化すること、伝えることは大変難しいですが、あの映画のあのシーンの感じ!だと伝わりやすいと思います。映画だけではなく色々な作品は共通言語になるので、色々なものを観ることは、大切だなと感じました。