プロローグ
建築写真を撮影する際、建物自体の美しさやデザインだけでなく、その空間がどのように使われているか、そこに暮らす人々の生活感などを伝える場合があります。この記事では、建築写真において人の要素をどのように取り入れるか、そして空間と生活の調和をどのように表現するかについて、私の視点から考察します。
建築写真に人はそもそも必要か
1. 人の要素を取り入れることとは
一時期建築写真に人を入れることが流行ったことがあります。特に海外の空間を撮影した広告写真にはたくさんの人で溢れている写真が多くありました。今は無人の写真の方が多いように思います。人が写っている写真は、その空間のスケール感がわかりやすく伝わったり、どのように使われているかを視覚的に示すことができます。
2. 人を入れることのデメリット
無人で撮影する意図は建築や空間の意匠や構造、マテリアルなどを伝えやすいことです。人物が入るとどうしても人物で隠れてしまう部分があること、人に目がいきがちな写真になることで伝えたいことがぼやけてしまう可能性が出てきます。主題となるのは建築や空間なのか、人がその場を使っていることで起こる事象なのか。人がメインになるのか引き立て役になるのかを考え、バランスを取ることが大切になってきます。
人の要素を取り入れる理由
1.スケール感やアクセントとしての要素
建築や内部空間を写真で表現すると、その大きさや奥行きが曖昧になることがあります。また建築家やデザイナーがスケール感を特徴として設計されている場合、人を一種のもの差しとして構図に入れるとスケール感を伝えやすくなります。個人的な体験として構図を決めている時にどうしても、構図の一部がポッカリ空いてしまうことがあります(白い壁が構図の多くを占めていたり、振り構図で撮影したときの写真の隅が空いてしまったり)。そのときは植栽やアートなどでバランスを取ったり、人をアクセントとして入れたりします。
2. 空間の使い方を示す
人が写っている写真は、その空間がどのように使われているかを視覚的に示すことができます。例えば、リビングルームでくつろぐ家族の姿や、オフィスで働く人々の様子を撮影することで、建築物の機能性やデザインの意図をより明確に伝えることができます。そして表情から感情が伝わり、この空間は楽しい場所、厳かな場所、リラックスする場所といった情報を伝えられる写真になります。
3. 親近感とリアリティの追加
人が写っている写真は、見る人に親近感を与え、空間が実際に使われている様子をリアルに感じさせます。これにより、建築写真が単なる構造物の記録を超えて、そこに住む人々や利用者の生活の一部として捉えられるようになります。
撮影テクニック
1. 人物の配置とポーズと写り方
人物を建築写真に取り入れる際には、その配置やポーズ、写り方が重要です。自然な動きやリラックスしたポーズを取ることで、空間の使い方や雰囲気をより効果的に伝えることができます。例えば、ダイニングルームで食事をする家族の姿や、カフェでくつろぐ人々の様子などが考えられます。また人をぶらすのかそうでないのかも重要な要素です。表情やなにをしているのかはっきりわかる止まった写真は、先ほど述べたような効果を伝えられます。逆に抽象度を上げる、スケールとして雰囲気として人を入れる場合はブラします。もちろん子供が走っていて楽しい場を表現する時もブラした方がいいと思います。
2. 光と影の使い方
人物がいることで、光と影の使い方がより重要になります。自然光を活かして、窓から差し込む光が人や空間をどのように照らすかを考慮することが大切です。また、人工光を使用して、特定の人物やエリアを強調することも効果的です。
まとめ
建築写真に人の要素を取り入れることで、空間の使い方や生活感をよりリアルに伝えることができます。人物の配置やポーズ、動きのある写真、光と影の使い方を工夫することで、建築物の機能性やデザインの意図を視覚的に強調することが可能です。伝えたい目的に合ったかたちで人を配置し撮影する。私自身、このアプローチを取り入れながら、建築家やデザイナーの意図を表現する写真を撮り続けていきたいと思います。