プロローグ
建築写真を撮影していると、しばしば建物自体の魅力を超えて、その背後にある意匠の意図や設計の思いに惹かれます。建築写真は、単なる記録ではなく、建築家が込めたメッセージを伝える手段であり、一人歩きをしやすいものです。この記事では、私自身の視点から、建築写真がどのようにデザインの意図を伝え、建物の価値を高めるのかについて考察してみます。
意匠の意図を捉える: 建築写真の役割
1. 建築家のビジョンを視覚化する
私が建築写真において最も大切にしていることの一つは、建築家やデザイナーのビジョンをどう視覚化するかです。建物の意匠には、それを設計した思いや理念が詰まっています。それを写真を通じて表現することで、見る人にその深さや意図を感じてもらいたいと考えています。またもう一方で建築を伝える相手のことも考えます。建築写真は基本的に2つの方向性があります。建築業界に向けてのものと、建築に興味がある一般層に向けてのものです。設計者はどこに向けて写真を使いたいのか優先順位を決めておくとより解像度の高い建築写真が撮影できると思っています。
2. 意匠の物語を語る
先程述べた通り、建築写真は専門性を追い求めるだけでは一方には響いていかないと思います。古典建築や集落や古民家住居を撮影する際に”普通”に建築写真を撮影していると、必ず歴史的な背景や文化的な意義、時間の流れが写真の中に入り込んできます。それは建築写真をより遠くへ連れて行ってくれると感じたことがあります。現代建築の建築写真は革新的な技術や意匠の先進性ことに重心が置かれていると感じますが、その建物がもたらす物語を感じてもらうことが双方を繋げる建築写真になるような予感がします。
写真の技法とデザインの共鳴
1. ライティングとシャドウの使い方
光と影の使い方は、建築写真を撮る上で私が特に意識しているポイントです。自然光の中で建物がどのように見えるか、どの部分が光によって強調されるか、そういった要素が写真の中での建物の表情を決定づけます。晴天の影が作り出すコントラストや深みも、曇天のフラットな光も、雨天のしっとりした厳かさも、建物の意匠、構造やディテール、空気感や表情を引き立てる光です。
2. 構図と視点の選択
私がは一枚の写真の中で要素の割合をコントロールすることです。例えば6:4で建築写真と風景写真があったり、建築写真とディテール写真があったりなど様々です。これは建築写真の専門性を別の要素で和らげたいと考えているかもしれません。もちろん純度100%の建築写真も好きです。建築の賞応募用の撮影では、対称性を意識し、斜めからの視点で内容を伝え、印象的な写真をつくろうとしています。余談ですが、正対した写真はいいねをもらいやすい構図だと某建築専門雑誌編集長がclub houseでお話しされていました。
まとめ
建築写真を通じて、建物の美しさだけでなく、その背後にある意匠の意図、物語や感情などを伝えることが私の目指すところです。これは私の個人的な思いでもあり、写真を通じて建築の新たな魅力を発見してもらえたらと願っています。今後も、建築家やデザイナーの思いを尊重し、そのメッセージを視覚的に伝える写真を撮り続けていきたいと思います。