2024年今年もあとわずかとなりました。今年は建築のデザイン賞を受賞する建築物を撮影させていただいたり、設計会社内の社内選考に当選され社内誌になったりと撮影で伝える助力ができた部分がわかりやすいかたちで出て嬉しく思っています。
賞応募では書類選考を通す建築写真を撮影することを最低限のものとして自分に課していますが、何を考えて撮影しているのかまとめてみようと思います。ざっくばらんにいろんな方向で気にしていることを書いているのでとりとめがないかもしれませんが、ぜひ読んでみてください。
1. 応募要項をしっかり確認する
デザイン賞ごとに、写真の形式や枚数、提出方法などが異なります。応募要項を確認し、以下の点を事前に設計者と打ち合わせしたり、過去の受賞した建築の写真を見たりして撮影に挑んでいます。応募要項で気になるのは近年建築動画も提出できるということです。建築動画の使用が拡大する要因の一つだと感じています。
- 必要な写真の種類(外観、内観、ディテールなど)
- 解像度やファイル形式(JPEG、TIFFなど)
- 写真の使用目的(ウェブサイト、印刷物、プレゼン資料)
- 提出期限や方法
2. ストーリー性を意識する
審査員は写真を通じて建築のコンセプトや特徴を理解します。そのため写真にはストーリー性を持たせることが重要です。賞に提出する資料製作にはかかわれないので、3枚で魅せる、5枚で魅せるくらいの感覚で撮影するポイントを考えています。
- 全体像を伝える: 建物の外観や立地環境を捉えた写真を用意し、建物のスケール感や周囲との調和を表現します。
- 内部空間を体感させる: 内観写真では、空間の広がりや光の使い方、素材の質感を伝えることを重視しましょう。
- ディテールで特長を強調: 階段や手すり、ファサードのデザインなど、建築物のアイデンティティを象徴する部分を詳細に撮影します。
3. 光の使い方を工夫する
建築写真において光は作品の印象を大きく左右します。自然光と人工光を適切に使い分け、建物の魅力が伝わるシチュエーションを考えます。
- 自然光: 時間帯によって光の角度や強さが異なります。建物の特徴を引き立てる光の条件を見極め、早朝や夕方の「マジックアワー」を活用するのも効果的です。
- 人工光: 内観撮影では照明デザインを活かし、空間全体に明暗のリズムをつけることで魅力を高めます。
- 影の活用: 光と影のコントラストは建物の立体感や質感を強調します。影をどのように取り入れるかも工夫しましょう。
4. 構図と視点にこだわる
アングルは当然、建物のデザイン意図を的確に伝えるための鍵となります。
- シンメトリーを活用: 正面からのシンメトリックな構図は、建物の秩序や美しさを強調します。
- 人の視点を取り入れる: 建物を使用する場面をイメージさせるために、人の動きや生活感を取り入れるのも効果的です。
- パースペクティブを活かす: 広角レンズを使用して建物のスケール感や空間の広がりを強調することも有効です。
5. 多角的なアプローチをする
建物の魅力を余すことなく伝えるためには、さまざまな角度から撮影を行います。
- 外観: 全景と部分的なカットをバランスよく組み合わせ、建物の全体像と特徴を両方伝えます。
- 内観: 空間の使い方や居心地の良さが伝わるよう、広角から詳細まで幅広く撮影します。
- 周辺環境: 建物が周囲とどのように調和しているか、または際立っているかを示す写真も重要です。
6. 編集で最終的な印象を調整
写真は撮影後の編集でさらにクオリティを高めることができます。ただし、過度な編集は建物の実際の姿を損なうため、注意が必要です。
- 色調の補正: 光の色温度やコントラストを調整し、建物の素材感を引き出します。
- 不要物の削除: 電線やゴミなど、視覚的に邪魔な要素を取り除きます。
- 一貫性: 複数の写真が統一されたトーンで仕上がるように心掛けます。
7. 専門家に依頼するメリット
デザイン賞に応募する写真は、その建物の価値を最大限に引き出すプロフェッショナルな仕上がりが求められます。専門の建築写真家に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 撮影と編集のスキルを活かした高品質な写真
- 建築の特性や意図を理解した視点での撮影
- スケジュールや提出要項に合わせた効率的な対応
まとめ
建築デザイン賞への応募写真は、建築の価値を最大限に伝えるためにいろいろなことを考えてしまいます。審査員に建物の魅力をしっかりと伝えるのも大事ですが、設計された方が納得した写真を使っていただくとプレゼンする際の自信や思いに力添えできるのではないかと思っています。
賞応募はいわゆる他評価になるわけですが、まずは設計された方に気持ちよく資料の提出とプレゼンをしていただけるように撮影する、そして自分もいいなと思える設計者と撮影者の自己評価も大事にしていきたいと思います。