プロローグ
建築写真の成功は、設計者や施工会社との緊密なコミュニケーションが必要です。設計者が建物に込めた意図や意匠を理解し、写真に活かすことで、建物の魅力を最大限に引き出すことができます。
この記事では、設計者や施工会社とのコミュニケーションが建築写真の成功にどのように影響するのか、そしてその連携から生まれる成果について探ります。
設計者・施工会社との連携がもたらす価値
1. デザイン意図と施工の実現性の理解
設計者が建築に込めた意図やコンセプトを深く理解することは、建築写真を撮影する上で最も重要な要素の一つです。また施工会社がそのデザインをどのように実現したか、施工過程での工夫やチャレンジについても理解することが必要です。
設計者と施工会社の視点を共に取り入れることで、建物がどのように形作られたのか、その過程をより深く表現することができます。
2. ニーズの調整と明確な方向性の共有
プロジェクトが始まる前に、設計者や施工会社と撮影に対するニーズや目標をしっかりと共有することが重要です。設計者が写真に何を求めているのか、どのような要素を強調したいのか、施工会社が特に注目してほしいポイントは何かを明確に理解することで、撮影の方向性が定まり、より効果的な写真を撮影することが可能になります。また、この段階でニーズを調整し、現実的な目標を設定することで、プロジェクト全体がスムーズに進行します。
そして建築の撮影は日程が限られています。宿泊施設なら開業までに施設で働くスタッフのロープレが必須であり、準備が整うのであれば開業し、売上が立つことがビジネスの側面からもいいとされるでしょう。検査完了前後から引き渡し前後の合間を縫って撮影するため、施工会社とのスケジュール管理は撮影の肝になります。
実際のプロジェクトにおけるコミュニケーションの具体例
1. 事前の打ち合わせ
プロジェクトの成功には、事前の打ち合わせが欠かせません。設計者や施工会社と直接会って話すことで、彼らのビジョンや優先事項を理解できます。例えば、設計者からは意匠の意図や建物のビューポイントについて、施工会社からは建設過程での技術的な工夫や課題、撮影が可能なスケジュールを聞くことができ、それらを写真にどう反映するかを計画することができます。
2. 現場でのリアルタイムなフィードバック
撮影当日には、開始もしくは終了時だけでも設計者や施工会社の担当者が現場に立ち会っていただくことで、相互にフィードバックを得ることができます。これにより、設計者の意図や施工会社の技術的な要素を反映した写真を撮影することが可能です。たとえば、施工会社が特にこだわったディテールや工法を強調する撮影角度を見つけるために、現場での意見交換を行うことが有効です。
3. 撮影後のレビューと調整
撮影が終わった後も、設計者や施工会社とのコミュニケーションは続きます。撮影後の写真をレビューし、設計者や施工会社からのフィードバックを受けることで、必要に応じて追加撮影や編集の調整を行うことができます。もちろん指定された日程で撮影を終えることが大前提です。追加撮影はスケジュール上難しい場合が多いのであくまで最後の手段の一つと考えています。
特に施工会社は、建物がどのように組み立てられたか、どのように建設されたかを示す写真が重要であり、その期待に応えることで信頼関係が強化されます。
設計者・施工会社との連携から得られる成功
1. 設計意図と施工の成果を忠実に反映した写真
設計者や施工会社との緊密な連携により、撮影された写真は、建物のデザイン意図や施工の成果を忠実に反映したものとなります。これにより、建物の特徴が際立ち、設計者のビジョンと施工会社の技術力が写真を通じてしっかりと伝わります。また、こうした写真は、設計者と施工会社が共にプロジェクトのプレゼンテーションやプロモーションに使用する際に、非常に効果的なツールとなります。
2. 継続的なパートナーシップの構築
撮影は建築が完成した最後の工程です。
「終わりよければ全てよし」と言うように、最後の工程である撮影はみんなに喜んでもらえるものを納品し、綺麗に終われることが最もいいかたちだと思います。大変だった設計や施工期間を写真で思い出していただくとき、会社の事例として写真を使用するときに、いいかたちで撮影が終わっていると建築に携わった方々全体でいい関係を続けられるような気がしています。
3. プロジェクトの評価向上
設計者と施工会社の意図を的確に反映した建築写真は、プロジェクトの評価を大いに高めます。特に、建築雑誌や賞レースに応募する際には、設計と施工が共に評価される写真が役割を果たします場合もあります。
まとめ
建築写真における設計者や施工会社とのコミュニケーションは、プロジェクトの成功に欠かせない要素です。設計者のビジョンや意図、施工会社の技術や工夫を理解し、それを写真でどのように表現するかを考えることで、建物の魅力を最大限に引き出すことができます。事前の打ち合わせから撮影現場でのリアルタイムなフィードバック、撮影後のレビューまで、設計者や施工会社との連携を密にすることで、成功する建築写真が生まれるのです。これからも設計者や施工会社との信頼関係を築き、共に素晴らしい作品を作り上げることを目指していきたいと思います。