プロローグ
建築を伝える際、伝統的な手法である写真は建物のディテールやデザインの美しさを捉え、静的な魅力を伝えるために非常に効果的です。しかし建築には単なる静的な美しさだけでなく、空間としての体感や時間と共に変化する魅力があります。これを伝えるには静止画だけでは限界があると感じています。そこで建築の全体像や体験をより動的にそしてリアルに伝えるためのツールとして「動画」が重要になってきます。
本記事では、なぜ建築を伝える際に動画が必要とされるのか、その理由と効果について解説していきます。
1. 空間の「体感」を伝えるための動画
建築は美しいかたちを鑑賞するだけのものではなく、人々がその空間を歩き、時間を過ごし、さまざまな感情を感じる「体感」の場です。動画を使えば静止画では捉えきれないこの体験をより臨場感を持って伝えることができます。
2. 時間の流れを表現する
建築は時間とともに表情を変え、光や影、さらには人々の動きによって生きた空間となります。これを伝えるには、静止画では別の視点に注目が集まりやすい場合が多いため、動画ならではの「時間の流れ」を通してその変化を強く視覚化することができます。
3. 動線と空間の広がりを表現する
建築の中でどのように人が動き、空間をどのように利用するかを伝えることは、その建物の設計意図を理解する上で重要な要素です。動画は、この「動き」を捉えることができるため、建物内部の動線を視覚的に表現するのに最適なツールです。
4. 感情や雰囲気を伝える
動画は音楽やナレーション、そしてカメラワークによって、空間の雰囲気やその場の感情を強く伝えることができます。これにより、建物が持つ無機質な印象を和らげ、より感覚的な体験として伝えることが可能です。
5. 建物のコンセプトや物語を伝える
動画は建築家やデザイナーの想いや、建物が持つ歴史的な背景をストーリーとして伝えるのに最適なメディアです。設計の意図やテーマを映像と音声で組み合わせることで、視覚的かつ感情的に視聴者に訴えかけることができます。
6. デジタルマーケティングにおける有効性
動画はインターネット上で視覚的に情報を伝える際に、最も効果的なメディアの一つです。特にSNSやウェブサイトで建築のプロジェクトを発信する際、短い時間で強いインパクトを与えることができるため、マーケティングやプレゼンテーションにおいて重要な役割を果たします。
まとめ
魅力的な建築写真と建築写真の間を写真で表現すると、魅力的でない説明的すぎる写真ができあがることが多々あります。経験として絵にしづらいその場所は設計において重要な要素だったりします。青木淳さんが設計されていた住宅の図面に「領域」という言葉が使われていました。このような空間と空間のつなぎめが曖昧で重要な要素になる設計は、写真では表現が難しく動画で見せた方がいいのではないかなと感じています。これはほんの一例ですが、写真と動画で同じものを表現すると違った見え方がします。昨日も写真で見せたいところを表現できなかったので動画を撮影したという建築家のお話を聞きました。