
プロローグ
建築写真の基本のパースペクティブ(パース)の取り方は、建物の印象を大きく左右する重要な要素です。パースは、写真に奥行き感や立体感を与えるだけでなく、建物の形状や構造を強調し、視覚的にインパクトのある作品を作り出します。
この記事では建築写真におけるパースの取り方とその効果について探り、どのようにして最適なパースを選び出すかを考えてみたいと思います。
シフトレンズで建築を撮る意味
もう10年程前になるのですが、当時建築写真事務所に入りたてだったころです。ちょうど事務所のマンションが改修塗装工事を終えて綺麗になったとき、師匠がカメラを持ってきなさいと。せっかくマンションが綺麗になったから写真撮ろう。ついでにシフトレンズの使い方を教えると言ってくださいました。カメラを構えていると、一言。
シフトレンズはパースコントロールのために使う。
と教えていただきました。建築写真の基本は水平垂直が合っていることです。単焦点やズームレンズで水平垂直を合わせて撮ると、アングルの制限が強く表現の幅が限られます。後で編集して水平垂直を直せば確かに狙った構図にできますが、現場でクライアントに編集前の写真を見せてもわかっていただけないでしょうし、100%狙った構図にならないです。そのためシフトレンズは建築写真において必須の機材です。その時撮った写真はマンション関係者の方々にポストカードとして配りました。
パースの基本とは?
今更ですが言語化の意味も込めてパースペクティブとは、遠近法とも呼ばれる視覚効果で、物体が距離に応じて拡大縮小して見える現象を指します。建築写真では、パースをどのように取り入れるかによって、建物のスケール感や構造の複雑さ、さらにはその場の雰囲気までもが大きく変わります。
たとえば、カメラを建物に対して正面から垂直に構えると、建物のシンメトリーが強調され、安定感のある写真が得られます。これに対して、カメラを斜めに構えて撮影すると、パースの効果で建物がよりダイナミックに見え、視覚的なインパクトが強まります。このように、カメラの位置や角度を変えることで、同じ建物でも全く異なる印象を与えることができるのです。

パースの種類とその効果
建築写真でよく使われるパースの取り方には、いくつかの代表的な種類があります。それぞれのパースがどのような効果を生み出すかを理解することは、撮影者にとって非常に重要です。
1. 一点透視図法
一点透視図法は、画面の中央に消失点を置き、そこに向かってすべてのラインが収束する構図です。主に長い廊下や道路を撮影する際に使用されることが多く、視線を中央に引き込み、奥行きを強調する効果があります。この手法は、建物のシンメトリーを強調したり、空間の広がりを視覚的に捉えたりするのに適しています。
2. 二点透視図法
二点透視図法では、画面の左右に消失点があり、建物のエッジがそれぞれの消失点に向かって収束します。この構図は、建物の角度を強調し、立体感や動きを生み出す効果があります。斜めからの撮影では、二点透視図法がよく使われ、建物のボリューム感をよりドラマチックに表現することができます。
3. 三点透視図法
三点透視図法は、上記の二点透視に加えて、上下方向にも消失点が存在する構図です。これは高層ビルなどを下から見上げるように撮影する際に使用され、建物の高さや迫力を強調する効果があります。この手法は、建物の圧倒的なスケール感や存在感を表現するのに非常に効果的です。

パースを活かした構図の選択
パースを効果的に活用するためには、どの方向から撮影するか、どの高さからカメラを構えるかによって、写真の印象は大きく変わります。たとえば、建物の天井照明や装飾を見せたい場合は、低いアングルからシフトレンズで天井を大きく入れた構図にします。
逆に、空間の広がりや奥行きを表現したい場合には、一点透視図法を使用し、中央に向かって視線を導くような構図を選ぶと効果的です。このように、建物の特性や伝えたいメッセージに応じて、最適なパースと構図を選び出すことが求められます。
まとめ
建築写真におけるパースの取り方は、写真の質や表現力を大きく左右する重要な要素です。パースをどのように取り入れるかによって、建物のスケール感、立体感、さらにはその場の雰囲気までもが変わります。写真を撮影する際には、パースの効果を最大限に引き出すために、構図やカメラの位置を工夫することが重要です。これからも、建築写真の表現を追求し、パースを活用した魅力的な写真を撮り続けていきたいと思います。